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世界でいちばん幸せな公園
2010.11.22 Monday
今年に入ってからよく会うようになった友達がいる。
浅く広く付き合うことができない自分にとって、暇をもてあましている人は絶好の手合いで、休みのたびに会う。卓球をして遊ぶ。夕ご飯を食べる。公園で寝転ぶ。 なんだか「るるぶ」みたいだけれども、「寝転ぶ」だけは、ガイドブック「るるぶ」も扱わないだろう。それだけ地味で、人気はないかもしれない。 あるとき2人で居酒屋から出て、散歩がてらにふと寄った公園で、寝転びたいなぁ、とつぶやいたら意外にも食いついてきた友達。その日から昨日まで、4度公園で寝転ぶだけ、という遊びとも言えない遊びをしている。 4度繰り返すと、互いに「寝転び」の経験値があがって、毛布や枕を持ち込んだりしている。コンビニで少しお菓子を買って、飲み物を買って準備万端。自販機が近くにあれば、たまに暖かい飲み物を買ったりとか。 何を喋るでもなく、お互い黙ったまま夜空を見ている時間が長い。頭の向こう側でちいさく車の通る音。風が渡ると葉のこすれる音。足元には水の流れる音が聞こえてきて、眠気を誘う。寝たっていいし、喋りたいときにだけ喋ればいい。喋らなくても沈黙なんて気にならない。深い話をするでもなく、かといって無意味と思えるギャグを言ったりもしない。寝転がっていると、不思議と喋り方がゆっくりになる。ため息が多くなる。笑う回数が少し減る。 それはあまりいいことではないかもしれない。笑う方がいいのだろうし、明瞭に明るく喋った方がいい、と言われている。言っているのは世間で、お互い世間から離れるために公園に来ているのだから、どうだっていいのだけれど。 ため息をつくと幸せが逃げていくなんて誰が言ったのだろう?ここではため息のたびにどうしたって「幸せすぎるねぇ」って語尾が延びて、少しニヤける。 隣で寝転んでいる友達が「たじま君が結婚したら、こういうことできなくなるのかなあ」と言う回数が最近増えてきたように思う。 まだ日が出ている時間、卓球をやっていると、隣の台で遊んでいた家族連れの球がとんできて、僕はお父さんらしき人に球を手渡した。その時目にした手が、大きさ、形、なんだか全てが「お父さんの手」だった。 手袋を取って自分の手を見ると、まだまだ公園で寝転がっていられる手だと思った。 まだ平気みたい。 遠くに見える人家の灯りが愛しくなったころ、ちょっとだけ元気をもらってそれぞれの家に帰る。それを繰り返すこと4度。流れ星1回。
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