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誉めてやりましょう。
 3〜4日前に「かもめ食堂」のDVDを借りて、おお、日本の映画、いいじゃん。と思ったついでに、小林聡美のドラマが見たくなって、「すいか」を借りてみた。これまたいい。もう返却もしてしまったので何話か忘れてしまったけれども、主人公の基子(小林聡美)が、上司に「引越し祝い、何かやらなくちゃね。何が欲しいか考えておいて」と言われて、何日間も悩み抜いた末、「誉めてください」と言ったシーンがものすごくよかった。困惑する上司に、自分で作ってきたセリフを読み上げさせ、隣に座って神妙に聞いているという、そういうシーン。
 働いているのだし、お金に困っているわけでもない、物であれば自分で買えるし、相手から物を貰う、というのは形は残るけれども、遺るものではないのかもしれない。そう思ったのは、毎日新聞の夕刊に載っていたコラムを読んだから。
 こんな話。
 ある私立中等部のクラスで先生がクラスメートそれぞれのいいとろこをみんなに書かせ、それをリストにして一人一人に手渡した。生徒の一人であるマークはその後ベトナム戦争で戦死するのだが、マークの両親は葬儀に参列した先生に「息子は死んだ時、これを身につけていました」と言って、今では形見となったそのリストを取り出すのである。
 
 この記事を読み、はて、自分に遺っている言葉はあるのだろうか、と我が身を省みるのだけれども、なかなか出てくるものでもないらしい。今度ぼくに会ったとき、どこかしら誉めてもらえると嬉しい。また、ぼくに出会わずとも、誰かを誉める、ということは国を超えて喜ばれることであることを覚えておいてもらいたい。
 
| 新聞 | comments(5) | trackbacks(0) |
クリスマス・ラテ
 ついさっき記事を投稿して、そしてふと見返してみたらあらまあなんてことでしょう!連続して「クリスマス」の単語が。
 うーん、わたくし反省いたしました。もう今年は「クリスマス」の単語は封印させていただきます、とはまだ言えないのです。だって、まだ、穂村弘の「クリスマス・ラテ」を紹介させていただいてないのですから。この「クリスマス・ラテ」ってのは穂村弘の『本当はちがうんだ日記』に所収されている話なんだけど…
 あぁもう、これから「クリスマス・ラテ」を紹介するってときに田島の文章が邪魔になりかねないのでもうここらでやめておきます。では皆さま、楽しいクリスマスを。

クリスマス・ラテ 穂村弘

スター・バックス・コーヒーで、タゾ・チャイ・ティー・ラテのショートサイズ(シロップ控えめ)を飲みながら、ぼんやり将来のことを考える。
将来、何になろう。
どこに住もう。
誰と暮らそう。
何をしよう。
そこで、ふっと思い出す。
あ、もう、今が将来なんじゃん。
俺、41歳だし。
何になろうってのは、総務課長になってるんだし。
どこに住もうってのは、18歳のときとおんなじ町のおんなじ家のおんなじ部屋に住んでるんだし。
誰と暮らそうってのは、70過ぎた両親と3人で暮らしてるんだし。
何をしようってのは、スターバックスでタゾ・チャイ・ティー・ラテのショートサイズ飲んでるんだし。
シロップ控えめだし。
そうか、そうか。
考えなくてもいいんだ、もう。
将来のことなんか。
もう21世紀なんだ。
世界が滅びるって云ってたノストラダムスの予言も4年前に終わったし。
何にも起きなかったし。
最悪8万人の死者が予想されるって云ってた2000年問題も3年前に終わったし。
何にも起きなかったし。
鉄腕アトムが生まれるって云ってた2003年ももう終わるし。
何にも起きなかったし。
そうかそうか。
今が将来なんだから、僕は将来の心配なんてしなくていいんだ。
もう老眼だし。
足がもつれるし。
肩がよく回らないし。
モーニング娘。名前は知ってるけど見たことないし。
ゴールデン・ハーフもキャンディーズもピンク・レディーもどこかに消えて、いつのまにか辺りはすっかり21世紀なんだ。
つんく♂、ってなんなんだろう。
えーと。
それで、僕は。
何をやってるんだっけ。
ああ、そうか。
ネクタイ締めて総務課長でタゾ・チャイ・ティー・ラテなんだ。
シロップ控えめなんだ。
あ?
クリスマス・ツリーだ。
ああ、そうか。
もうクリスマスなんだ。
大きいなあ。
綺麗だなあ。
21世紀にもクリスマス・ツリーがあってよかった。
光っててよかった。
今年のクリスマス、どうしようかな。
奥さんいないし。
子供いないし。
恋人いないし。
お父さんとお母さんと3人で炬燵(こたつ)で不二家のケーキを食べようかな。
「おまえ、将来何になるんだい?」
いやだなあ、お母さん、もう今が将来なんですよ。
それから一人で町に繰り出して、スターバックスでクリスマス・ラテを飲もう。
クリスマス・ラテはクリスマスだけの特別な飲み物なんだって、ここに書いてある。
スターバックスに行けば、見たこともないけどモーニング娘。みたいな店員が、
こんにちは、って笑いかけてくれるだろう。
いつもは緊張して曖昧に頷くだけだけど、クリスマスだから僕もにっこりしてみよう。
僕の笑顔を見るのは初めてだろう。
「いらっしゃいませ、こんにちは」
こちらこそ、こんにちは。
クリスマス、おめでとう。
きみたちは将来何になるんだい?
僕は今が将来なんだよ。
つんく♂、ってなんなんだい?
ああ、きみたちも何か飲みなさい。
僕は冬のボーナスが1.8ヶ月出たからね。
ご馳走しよう。
クリスマス・ラテがいい。
クリスマスだけの、特別な飲み物だ。
みんなで、飲もう。
大きなツリーを見上げながら。
クリスマス・ラテ。
シロップたっぷりで。
メリークリスマス。
クリスマス、おめでとう。





| 穂村弘 | comments(2) | trackbacks(0) |
クリスマス、この一冊。
評価:
ローラ・インガルス・ワイルダー
福音館書店
¥ 788
(2002-08)
 年の瀬も迫ってきて、ついつい思い出すのが、今ではもう貰う立場ではないけれどもお年玉のことだったりする。
 特に、母方の祖父から貰うお年玉だ。いつも決まって500円だった。おいおい、これだけ?っていう気持ちで、姉とカゲで苦い顔を合わせていた。
 今ぼくは、そんな時代のぼくに肩に手をあてて、振り向きざまにパンチを一発くれてやりたい気持ちだ。(ついでに姉もいっとくか)そして言うだろう、これを読め!と。特にここね!とP286の『エドワーズさん、サンタクロースに出会う』の箇所を指先でトントンたたいてから、あまつさえ朗読して聴かせてやることだろう。集中力が散漫な幼いぼくのために、かいつまんで。この部分などを。

 -ローラの靴下のてっぺんに、何かピカピカ光っているものがあります。ローラは、キャーッと声をあげて、ベッドからとびおりました。(略)その光っているものは、キラキラ光るあたらしいブリキのカップだったのです。ローラはぴょんぴょんとんで、キャアキャアいったりわらったりしていますが、メアリイは、じっとつっ立ったまま、目をかがやかせて自分のカップをじっと見つめていました。P298

 少年たじまよ、わかるか君に。そのあとローラとメアリイは薄荷のキャンディーを貰ってはキャー!で、ハート型のお菓子を貰っては『たくさんすぎるくらい』で、そのうえ一ぺニイのお金を貰って、『こんなにすばらしいクリスマスは、ほんとうにはじめてでした』なんだ!はぁ、疲れた。
 たぶん小賢しい少年たじまは「一ペニイって何円?」って聞いてくるに違いない。
 おっと、この時代に長くい過ぎてしまったようだ。しかも過去の自分と会話するだなんて、禁則事項もいいとこだぜ。未来人にはこれが多くてかなわんよ。やれやれ。
 「禁則事項です☆」僕は語尾に星を飛ばし、朝比奈みくるばりのウィンクを決めて去るだろう。最後に一つだけ「サターンじゃなくて、プレステにしとけ」という意味深長な言葉を残して。
 
 
 
  
 
| ローラ・インガルス・ワイルダー | comments(3) | trackbacks(0) |
大人の結婚
 親友であるアモンから「来年の3月、俺結婚するんだ。だからさ、リョウにちょっと受付頼めないかなぁと思って電話したんだけど、どうかな?」と連絡を受け、おいおい、結婚って、あの結婚か?と聞きただしたところ、どうやらあの結婚らしいので定石どおり歳相応の反応を
「マジっすか!」

 僕の親友にして、不思議なことに趣味がひとつとして被らないアモンは、あらゆるところで僕とは対照的だ。着る服の趣味もどうもピンとくるものがないし、お金の使い方も僕には理解ができない(23歳でフェアレディーZ買いますか)し、好きな女の子のタイプも違えば、もちろん交際の仕方だってまったく違っている。僕の知る限り、彼に女がきれた覚えなどないのだ。
 大学時代に2人で呑んで、「彼女と長続きをする秘訣をこの寂しい小生にご教授願えぬか」と伺ったところ「浮気すりゃいいんだよ」とサラリと言い、バカヤロウ、お前みたいに格好よかないよ、といじけたりしたものだ。
 そんな彼ではあるけれど、交際期間5年という長い年月を経ての結婚だから、まぁなかなかどうして真面目なんじゃないかなぁと関心したりもするわけだ。
 またその結婚相手というのが、中学、高校が僕と一緒だった人だから、なんだかちょっぴり嬉しかったりする。なんでまたそのことが嬉しいのかと考えると、たぶん僕の知っている範囲で身を固めてくれたことが妙に安心感を伴うものなんじゃないかと思った。
 会社へ通い出して、お互いの人間関係を知ることができないために、休日に遊ぼうと誘うのも多少の遠慮が生じてくる年齢の、しかしそれが疎遠の原因ということも知っている、自分の中の板ばさみ。格好悪いことこの上ない。
 結婚の報せが舞い込んだ3日後にアモンと僕の共通の友達であるタクヤから電話があり「今暇か?暇だったらどっか遊び行こうぜ」というので、おいおい暇ってあの暇か?と聞き出したところ、あの暇らしいので、定石どおり、歳相応の反応を
「超暇!ド暇!暇死にするところ」
 
 車の中でタクヤが「アモンから電話あったでしょ?まさか結婚だなんてなぁ。受付俺も頼まれたんだけど、さすがに司会は頼まれなかったなぁ」とボヤいてた。
 知っている2人が結婚するというだけで安心感を覚える僕をよそに、司会を密かに狙っていたタクヤの格好良さと、どこかに能天気さが含まれる発言に癒されつつ、いざ鎌倉。
 高速道路を走行中「実はさ…」と重々しい前置きを告げてから「サービスエリアって入ったことないんだよね」とタクヤが言ったので「俺もないよ」と言い、ちょっと寄ってみるか?ということになりサービスエリアデビュー。
 無事に車を止め「俺たち今、大人になったんじゃね?」と互いにニヤけ合う。まったくもって進歩の遅い僕達2人。方や結婚を決めてる人もいるというのにね。
 大好きな漫画「青い花」の舞台が鎌倉ということもあり、お目当てのミルクホールへ行き、コーヒーを一杯。鶴岡八幡宮と露天を冷やかし、時間もあまったので由比ガ浜へ行くことに。海無し県に生まれた性が十分に発揮され、童心に返って「うわー」と声をあげてきゃっきゃっとはしゃいだ。
 帰るとき「これはさ、予習だよな」とタクヤが言った。「あたり前じゃん」と返しておいた。
「まったく、いつできるんだろうな、彼女」
「俺達予習ばっかりだよな」
 と笑い合う男2人、鎌倉を去る。
 もうすぐクリスマス。嗚呼クリスマス。

Song2/Blur


昔は髪の毛もありました。は?俺のことじゃないよ。Blurだよ。

 
 
 
| 日記 | comments(3) | trackbacks(0) |