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ドラッグと似ているのは化粧だけじゃない
 
 「かつらの寿命ってね、実はけっこう短いからよ。あなたは知らないかもしれないけど、だいたいあれ二、三年しかもたないのよ。最近のかつらはものすごく精巧に出来ているからね、それだけ消耗も激しいの。二年か長くても三年たったら、だいたいは買い替えなくちゃならないの。ぴったり地肌に密着しているから、かつらの下にある自前の毛が前より薄くなればなったで、もっときちんとフィットするものに替えなくちゃならないしね。それでね、まあとにかく、もしあなたがかつらを使っていて、二年経ってそれが使えなくなったとしたら、あなたはこんな風に思うかしら?うん、このかつらは消耗した。もう使えない。でも新しく買い替えるとまたお金もかかるし、だから僕は明日からかつらなしで会社に行こうって。そんな風に思えるかしら?」
 僕は首を振った。「たぶん思えないと思う」
 「そうよね、思えないわよね。つまりね、一度かつらを使いだした人は、ずっとかつらを使う宿命にあるのよ。だからこそかつらメーカーは儲かるの。こう言っちゃなんだけど、ドラッグのディーラーと同じよ。一度お客を掴んでしまえば、その人はずっとお客なの。おそらく死ぬまでお客なのよ。だって禿げた人に急に黒々と髪が生えてきた話なんて聞いたことないでしょう。かつらってね、だいたい五十万円くらい、いちばん手間のかかるのは百万円くらいするのよ。それを二年ごとに買い替えるんだものね、大変よ、これは。自動車だって四年か五年は乗るじゃない。下取りだってあるじゃない。でもかつらはそれよりももっとサイクルが短いの。そして下取りなんてものもないの」
 「なるほど」と僕は言った。
 「それにね、かつらメーカーは自前の美容院を経営しているわけ。そこでみんなかつらを洗ったり、自前の毛を刈ったりしているの。だってそうでしょう、床屋さんにいって鏡の前に座って、よっこらしょってかつらを取って、さあ刈ってくださいってちょっと言いにくいじゃない。そういう美容院のあがりだけでも相当なものになるの」

-ねじまき鳥クロニクル(第1部)-

| ドッグイア | comments(0) | trackbacks(0) |
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